最初の注意点としては、昔のフィルムカメラと同様に、このカメラ本体が単体でできるのは撮影だけです。 撮影データを表示したりコピーしたり(あと細かい設定も)するためには、公式サイトやアプリストアから入手可能なTheta用アプリをインストールしたスマホやタブレット、パソコンなどの機器と接続する必要があります。 スマホやタブレット内蔵カメラや、デジカメやビデオカメラなどの一般的なカメラとの違いは、それらのカメラには被写体に「向ける」という前操作があって対象をあらかじめ四角い画角で切り取って撮影するのに対し、Thetaの場合は「向ける」という前操作はなく、カメラ位置の上下左右前後含めた全周囲を一気に撮影してしまう点です。(なので「被写体」が限定されず、撮影時にその場の周囲にあったものすべてが同時に「被写体」になる) そのため「360度カメラ」という呼び方は必ずしも正しくなく(パノラマ写真撮影でも「360度」とも言えるので)、「全天球カメラ」というのもやっぱり正しくなく(撮影されるのはプラネタリウムのような地平線以上の「天球」だけではないので)、個人的には「全周囲カメラ」というのが一番しっくりくる気がします。 カメラは本体の両面に魚眼レンズが計2つ、ヤヌス神の顔のように背中合わせでついている構造で、それぞれの魚眼レンズによる半球画像をソフトウェア的に繋ぎ合わせることで、全周囲を同時に記録した1つの画像にしています。なのでカメラ本体の厚さ分、どちらの魚眼レンズにも写らない死角ができるのですが、実用上はよほどカメラに近い位置(体感的にカメラから50センチメートル以下くらい)にある対象でない限りは、ほとんど気づかないレベルでうまく繋ぎ合わされています。 撮影は魚眼レンズの画像が元なので、そのままだと人間の眼には見慣れない、歪んで湾曲した画像データなのですが、Thetaアプリを使って表示画像を特定の視線の先に「ズームイン」することで、歪みが補正された普通のユークリッド幾何学的な四角い写真画像のように見ることができます。そして視線の先はアプリ操作で自由に変更できるため、画像の中の周囲を見回したり、空を見上げたりといったことができます。 ただ全周囲のデータを同時に記録している分、データサイズも大きく、撮影場所にもよるでしょうが静止画1枚のJPEGファイル1つで2.8MBから4.5MB