本機はTEACの新製品で、デジタル音声出力信号は、CDクオリティ(最大PCM 48kHz/16bit)での録音が 可能とのことである。 しかし、本機を使って、かつての「まともな」カセットデッキで録音した(エアチェックなど)カセットを デジタルデータ化しようと思っている方は、ぜひ一度考え直していただきたい。 本機のデッキとしてのメカニカル、また電気回路的にも、基本的性能が低すぎて、折角カセットに記録されている 音質が台無しになるのは間違いない。 アナログレベルでの音質が良くなければ、いくらリニアPCMで出力しても何の意味もないことだ。 まあ、WAVならばPCでMP3化できるので、ビットレートの低いMP3しかないよりはましといえるが。 まずメカニカルな面からみると、本機はテープデッキの要ともいえる回転系の性能が非常に低く、ワウフラッター(回転ムラ)は0.25%と、かつての高級機の約10倍もある。 オーディオ全盛期であれば、ちょっとしたラジカセでももっと良いスペックが普通であった。 このレベルの機器では、音楽(特に楽器の微妙な音色など)をまともに再生するのは不可能なことくらい、 オーディオメーカーなら自明のはずだ。 このデッキでダビング(コピー)したらどんな音質になるのか、想像もしたくない。 昔からカセットデッキを愛用してきた者としては、中級機以上であれば、どのような種類の音楽を再生しても、 全く音揺れを感じない、生の楽器の繊細な音質であっても、まったく問題なく再生できるレベルの製品が 当たり前だっただけに、その条件を満たさないカセットデッキでは困るのである。 音質にはこだわらない、例えば、過去に録音した語学番組や会議のカセットテープを再生できればそれで良い、 というニーズには対応できると思うが、きちんとした、音楽鑑賞に堪える音質で デジタルデータ化したいというニーズには対応できないのは明らかだ。 最近は、中国製の全く話にならないレベルのUSB出力付きカセットプレーヤーが出回っているので、 それに比べれば本機は、上記のような実用的ニーズには対応できるであろうが、それにしては 価格が高く、わざわざ本機を買おうという人は少ないであろう。 TEACが少し前まで販売していたモデルで、本機と同レベルの性能のAD-RW900という機種が あるが、これを使って1980年代に